不本意なこと




柳美里の『命』に次ぐ第二弾、『魂』をさっそく買ってきました。前作の時にたまたま(って言うな(^_^; )サイン会に行って、「ゆーたん、芥川賞作家と握手!」と喜んでいたので(笑)、これはまたまた読まねばと思って。

前作は「命を授かるということはこんなにも尊いことなのか」という部分もあったけど、なにせ妊娠中のトラブル(特に子どもの父親との)の話が多いので、私は「ずいぶんとシングルマザーになることにネガティブなのねぇ〜」と思っていました。あと、「産まれてからほんとにだいじょぶかな〜」と(笑)。

でも、今回の『魂』は東さんの癌闘病がメインで、『命』よりも壮絶でした。出産後の話なので子育ての描写も出てくるけど、そこらの母親よりよっぽど大事に大事に育てているのが、ちょっと意外でした。「私も東も傷だらけだったが、子どもにはかすり傷ひとつ負わせたくなかった」というくだりも。

読み終えて、シングルマザーがいい悪いではなく、その人が思い描いていたものと違うということはつらいのね、とわかりました。印象的なのは子どものお宮参りに行く場面で、「本当なら父方の祖母が抱くのに、この子にはそうしてやれない」と書いてある部分。彼女は「幸せな家族像」にどうしようもなく強い憧れを抱いていて、それが叶わないのでつらいのだと。

(私なんか、お宮参りでは父方の祖母が抱いてお参りすると本で読んだときは「げええええ〜、何じゃそりゃ〜」と思ったものだけど。私が無理やり結婚させられて親戚づきあいが大変だったりしたらそりゃーもう発狂するでしょうよ。)

でも、本を読んだだけだと「だいじょぶ?何か私にできることは」と言ってあげたくなる彼女も、実物はふつーの人に見えました。そのギャップを思うと、自分の傷口に手をつっこんで心臓を取り出して見せるような彼女の文章は、小説家魂だねえと思ってしまいます。

今生きているということがどれだけ驚くべきことで、どれだけ価値のあることかを思い知らされます。まだの人は、ぜひお読みくださいまし。






ああまたサイン会に行かなくっちゃ!(笑)

2001/2/6


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